アウフグースも注意!ロウリュによる「やけど」を防ぐ重要ポイント

近年増加傾向にあるロウリュによる「やけど」。安全にサウナを楽しむためには、ロウリュにおける高温の蒸気や水への対策、そしてご自身の体調管理を意識した無理のない利用が非常に大切です。今回は、ロウリュ中にやけどを負うリスクと、それを防ぐための具体的な重要ポイントを解説します。
ロウリュの正しい知識を身につけやけどを防ごう

消費者庁の発表によると、サウナブームを背景に、サウナ浴に関する事故情報が近年増加傾向にあります。
サウナ浴に関する事故で最も多いのが「やけど」。やけどの事故は様々な要因がありますが、ロウリュが原因となった事故の場合、ロウリュ時に発生した高温の蒸気により手にやけどを負うなどの事例があります。
サウナ利用者の増加に伴い、ロウリュを行う機会も増えているため、それに比例して事故のリスクも高まっていると考えられます。

やけどに注意!ロウリュを行う際の重要ポイント

ロウリュを行う際には以下のポイントに注意しましょう。
水が飛び散るリスク
非常に高温に熱されたサウナストーンに冷たい水をかけることで、水が一瞬で蒸発する際に、水蒸気と一緒に水滴が勢いよく弾け飛ぶことがあります。この弾け飛んだ水滴が顔や身体に直接当たるとやけどの危険があります。
特に以下のような状況の場合には、特に注意が必要です。
- 水の量が多い場合:一度に大量の水をかけると、ストーンが処理しきれずに水滴として周囲に飛び散りやすくなります。
- かけ方が乱暴な場合:水をストーンにぶつけるようにかけると、跳ね返りの勢いで水が飛び散ることがあります。
- ストーブとの距離が近い場合:ロウリュを行う人がストーブに近すぎると、飛び散った水を浴びてしまうリスクが高まります。
立ち上る水蒸気
ロウリュで発生する水蒸気は、乾燥したサウナ室の空気と比べて、非常に大きな熱エネルギーを持っています。
通常のドライサウナが100℃程度でもやけどをしないのは、湿度が低く、空気中の熱が肌にゆっくりと伝わるためです。一方、ロウリュで発生する蒸気は、水分が多く熱を肌に伝えやすいため、体感温度が急激に上がり、皮膚の表面に熱傷を引き起こすリスクがあります。
また、熱したサウナストーンに水がかかると、水が一気に蒸発して体積が膨張し、熱い水蒸気がブワッとサウナ室内に広がることで、熱が全身に強く伝わります。
以下のような場合、やけどを負うリスクが高まります。
- 蒸気の直撃:ロウリュ直後、ストーブの真上や近くにいると、立ち上る高温の蒸気を直接浴びてしまい、熱傷を負う危険性が高まります。
- 急激な湿度の変化:高温に設定されたサウナ室で大量にロウリュを行うと、湿度が急激に上昇し体感温度が熱くなり過ぎて、体表が耐えられなくなることがあります。
アウフグース

アウフグースは、ロウリュで発生した熱い水蒸気を、タオルやうちわを使ってサウナ室内にいる人に向けて扇ぐ行為です。アウフグースは以下のような理由から、ロウリュによるやけどのリスクを高めます。
- 熱風の集中と加速:アウフグースによって、本来ゆっくりと広がるはずの高温の蒸気が、熱波として一気に体や顔に届きます。これにより、皮膚の表面に熱が急激に伝わり、熱傷のリスクが高まります。
- 体感温度の急上昇:ロウリュで湿度が上昇しただけでも体感温度は上がりますが、アウフグースによってその熱が強制的に送り込まれることで、体感温度が限界を超えて急激に上昇し、皮膚の耐熱性を超えることがあります。
- 特定の部位への直撃:熱波師がタオルを振る際、特定の方向や人に熱風が集中してしまい、顔や耳など皮膚の薄い部分に熱が直撃することで、ヒリヒリ感や痛みを通り越してやけどにつながる場合があります。
セルフロウリュ
セルフロウリュは、自分のペースでロウリュできる魅力がありますが、誤った方法で行うと、通常のロウリュ以上のやけどのリスクを伴うことがあります。
今までの報告されている事故の事例は以下の通りです。
- 蒸気による手の甲や手首のやけど:柄杓で水をかける際、ストーブの手前から奥に向けて水を注いでしまうと、手前のサウナストーンで発生した高温の蒸気が、水をかけている手首や手の甲に直撃し、やけどを負うケースが多く発生しています。
- 水の飛び散りによるやけど:一度に大量の水を勢いよくかけたり、水をストーンにぶつけるように注いだりすると、高温になった水滴が周囲に飛び散り、顔や身体に当たってやけどを引き起こします。
- ストーブとの接触によるやけど:ロウリュ作業中にバランスを崩したり、柄杓を落としたりして、高温のストーブやヒーターに直接触れてしまうリスクがあります。
体調が万全でない場合
体調が万全でない場合、皮膚の耐熱性が低下したり、熱に対する反応が鈍くなったりするため、低温やけどや、熱傷につながる可能性があります。
体調によるやけどのリスク要因は以下の通りです。
- 意識障害や体調不良:飲酒後や睡眠不足、極度の疲労などで体調が優れないときにサウナに入ると、意識を失ったり、めまいを起こしたりする危険性が高まります。サウナ室で意識を失うと、高温のベンチやサウナストーブなどの熱源に長時間体が接触したままになり、重度のやけど(低温やけどを含む)を負う可能性があります。
- 皮膚のコンディション低下:極度の乾燥肌やアトピー性皮膚炎などで皮膚のバリア機能が低下している場合、熱い蒸気や熱風に対して皮膚が過敏になり、通常よりも早く痛みを感じたり、炎症を起こしたり(熱傷)しやすくなります。
- 薬剤の影響:一部の薬(例:血圧を下げる薬・精神安定剤等)は、体温調節機能や発汗作用に影響を与え、熱中症や意識障害のリスクを高めることがあります。その結果、意識を失い、熱源に接触してやけどを負う危険性が増します。

ロウリュを行う際のやけど対策

ロウリュを行う際には以下のポイントを押さえて、安全に楽しみましょう。
- 水はゆっくり一杯ずつ、ストーンの奥から手前に向かってかける
水はストーンに沿わせるように、優しくゆっくりと注ぎます。水のかけ方に気を付けることで、蒸気の立ち上がりをコントロールでき、手元に熱気が集中するのを防げます。
- 適切な距離を保ち、かける水の量を守る
水をかける際や、蒸気が立ち上がっている間は、ストーブから適切な距離を保ち、顔や手を遠ざけるようにしてください。そして、かける水の量を施設が定めている場合は、一度にかける水の量を守りましょう。
- 無理をしない
ロウリュ・アウフグースの最中、「熱い」「苦しい」「ヒリヒリする」と感じたら、無理せず、すぐにサウナ室から出るようにしましょう。アウフグースの際は、熱波師に合図をしたり、サウナ室の下段やドア付近の比較的熱が穏やかな位置を選ぶことも、リスクを減らす方法の一つです。
- 体調が悪い日は利用しない
少しでも体調に不安がある(二日酔い、寝不足、疲労困憊など)場合は、サウナの利用を控えましょう。
- 水分補給を徹底する
脱水は体調不良の原因になります。サウナに入る前とロウリュの合間に十分な水分補給を行いましょう。
まとめ:正しい知識と冷静さでロウリュでのやけどを防ごう

サウナブームによりロウリュの機会が増える中で、消費者庁への事故報告件数も増加しており、特に「やけど」を負う事故が最も多いとされています。ロウリュによる高温の蒸気や水の飛び散りは、やけどの直接的な原因です。また、アウフグースによる熱波の集中、セルフロウリュでの誤ったかけ方、そして何よりも体調不良時の意識障害が、重篤な事故につながります。
やけどを防ぎ安全に楽しむためには、「水はゆっくり奥から手前に少量ずつかける」「ストーブから適切な距離を保つ」「無理せず熱さを感じたらすぐに退出する」といった正しい知識と行動が不可欠です。ご自身の体調を最優先し、知識と冷静さをもって、安全で快適なサウナ体験を追求しましょう。



